これはある程度のランクでDota2をやっている人なら理解もしくは体得していることだろうが、あえて整理してみる。
Dota2の形勢には、勝った者がより栄えるという特性がある。5vs5のチームファイトで片方のチームが全滅したとする。単純にデス中はファームできないし、フリーでオブジェクトが取れる。なんならマップ全域が安全地帯になるので5人で高効率のスプリットファームをしてもいい。
同時に、栄えているものが勝つという特性もある。仮に両チームが同じヒーロー・同じプレイヤー技量だったとすれば、より強いアイテムを持っていたり(ゴールドアドバンテージ)よりスキルのレベルが高い(レベルアドバンテージ)方が勝つ。
この2つの性質を単純に並べてみると1回ついた差は挽回できないように思える。実際挽回させずに勝ち切るというパターンも多い。しかしもちろん、Dota2がゲームとして奥深いのはこれをひっくり返す戦略があるからだ。その一つが勝てるタイミングを待つことだ。
Dota2の各ヒーローに対して、所有するリソース(ゴールドとレベル)を横軸に、チームファイトで出せるインパクト(ダメージを与える、ダメージに耐える、相手が出せるダメージを減らす等々)を縦軸に取ったグラフを書くことができる。一般的にその切片が大きいヒーロー、つまりリソースが少なくても一定のインパクトが出せるヒーローがサポートヒーローであり、傾きが大きいヒーロー、つまりリソースが集まった終盤に大きなインパクトを出せるヒーローがコアヒーローとされる。
(ここでは深く立ち入らないが、実際は一次関数ではなく、レベルアップとアイテム入手のタイミングで強くなっていく階段関数である。その区間の移行直後の相対的な優位性が大きい状態をパワースパイクと呼び、チームファイトを仕掛けるべきチャンスになる。)
つまり、ある時間帯で負けていても、自分のチームのコアヒーローの傾きが相手よりも大きければ、ファームをし続けるだけでいずれ圧倒できる可能性があるということだ。各ヒーローの傾きの大きさは様々な要因で決まるため経験的に理解するしかないが、特に傾きが大きく長期戦に強いものはhard carryとかlate game carryなどと呼称され、たとえばMedusaはそれに含まれるだろう。通常攻撃が全体攻撃になるため攻撃アップアイテムの恩恵を大きく受けられるからだ。
逆にこの傾きが小さいコアヒーローを持つチームは、相手にファームする時間を与えないように攻め続ける必要がある。ここで最初の議論に立ち返る。チームファイトで勝つか、衝突を恐れさせて相手の行動範囲を制限しファームを遅らせれば、有利は自然と拡大していく。これをスノーボールと言う。
相手にスノーボールを起こさせないためには、どの時間帯でも相手と決定的な戦力差を作らないことが必要だ。だからコアヒーローの中でもsafe lane carry / mid / offlaneの役割分担が生じる。
たくさんファームして活躍できるのは爽快なので低いレート帯やロールキューがなかった時代は全員hard carryピックみたいなことも日常茶飯事だったが、そういうチームがバランスの取れたチームと戦った場合、セオリーでは序盤から負け続けて誰もファームできずに負けるということになる(まあ低いレート帯の野良では攻める側も上手くまとまれずに長期戦になってしまい、結局5carryが勝つということもよくあり、これもまたDota2の奥深さである)。